環境調査といえば、「生物や自然に関わる仕事」というイメージがありますが、正直なところ漠然として仕事内容が見えにくいです。
僕も環境調査に興味を持ったときに、具体的に何をするのかわからず調べたことがありました。
仕事内容が不透明なまま就職や転職をしてしまうと、ミスマッチが起こりやすく早期退職につながりかねません。
ここでは興味があって就職や転職を考えている人に向けて、調査歴8年の僕が環境調査の仕事内容を紹介します。
環境調査の仕事内容とは?
環境調査といっても分野が幅広いので、ここでは僕が担当している生物と土木・構造物調査の2パターンを紹介します。
環境調査会社といっても、1つの分野のみを専門にしていることは少ないです。たとえば、生物のみだと対象の生き物が活動する時期が繁忙期になり、それ以外は暇になってしまいます。
複数の分野を専門にすることで、仕事量のバランスを取っています。
もちろん、哺乳類や植物専門など、特定の分野に特化した調査会社もありますが多いとは言えません。
専門分野が複数ある環境調査会社に就職・転職する場合は、「自分が望まない分野の仕事をする可能性がある」ことも覚悟しておきましょう。
生物調査の仕事内容
生物調査を一言で表すと、「決められた調査範囲で、適切な調査方法により、生き物の種類や個体数を確認する」のが仕事です。
調査範囲の選定理由はさまざまですが、その場所で大規模な工事をする予定があったり、風力発電施設の建設予定があったりなど、「自然環境に影響を与える開発がある場所」が対象になることが多いです。
もしくは、開発後に大きな変化がないか調査することもあります。
対象の生物によって山や河川、海など、さまざまな場所に足を運びます。
調査方法は生物の種類によって変わりますが、次のような方法が一般的です。
- 哺乳類:目撃法、捕獲法、トラップ法、フィールドサイン法(足跡やフンなどを確認)、無人撮影法(カメラを設置して確認)
- 爬虫類:目撃法、捕獲法、フィールドサイン法
- 両生類:目撃法、捕獲法、フィールドサイン法
- 鳥類:ラインセンサス法(調査ルートを歩きながら種類などを確認)、ポイントセンサス法(定点で種類などを確認)
- 昆虫類:目撃法、採集法、トラップ法
- 魚類:投網、タモ網、定置網、刺網などによる捕獲
- 底生動物:採集法
- 植物:目視観察
基本的に、見たり捕まえたりした種類と場所を記録することがメインです。
たとえば、小さなネズミがメインの哺乳類調査であれば、シャーマントラップと呼ばれるアルミ製の箱型の罠を設置したり、鳥類では双眼鏡や望遠鏡を使って種類や個体数、行動パターンを記録したりします。
調査場所と方法は生物によって大きく異なりますが、
- 目視したり捕獲したりする
- 個体数や種数、生息環境などを記録する
- 発見した場所をGPSや印刷した地図上に記録する
といった流れはシンプルですし共通しています。
ただ生物の種類によっては、見つけることが難しかったり、種類の判別が難しかったりするため、専門性が問われる仕事といえます。
生物環境調査のやりがいは「環境保全」につながること
生物環境調査のやりがいは、生物や環境保全につながることです。
調査がなければ、生物に配慮なく工事・開発されて生息地がなくなってしまいます。自分の実力不足で生物が観察できなかった場合は、生存をおびやかす事態になりかねないため責任は重大です。
生息数が少ない生物を調査するときは、なんとか観察しようとプレッシャーを感じつつ仕事をすることもありますが、成果が出て保全につながったときには大きな達成感があります。
また個人的なことですが、生物調査のメリットとして、
- 仕事で生き物を観察できる
- 山や河川、海など自然を感じつつ仕事できる
- 出張でさまざまな土地に足を運べる
といった点は、生き物や自然、旅行が好きな人にはおすすめです。
土木・構造物調査の仕事内容
土木・構造物調査では、「人間が造ったもの」に異常がないか調べるのが仕事です。
主な対象は次の通りです。
- トンネル
- ダム
- 橋
- 道路
- 港湾
トンネルやダムなら山間部、港湾なら海など、現場はさまざまですが、
- ひび割れ
- 欠損
- 漏水
- サビや腐食
といった対象施設に現れる異常の有無と規模を調べて記録することは共通です。
基本的には目視で確認して、コンベックスやスケールなど、長さや大きさを測れる機材で寸法を計測します。
シンプルな仕事に見えますが、さまざまな機材を扱ったり、現場の状況に合わせて柔軟に対応する必要があったりするため、職人に近い仕事といえます。
土木・構造物調査のやりがいは「人々の生活の安全」につながること
土木・構造物調査は、人々の生活の安全に直結します。
災害や経年劣化などで異常が現れると非常に危険で、そのまま放置すれば事故にもなりかねません。
事前に調べて安全性や耐用年数、補修工事の検討などを行うことで「人々の生活の安全を守る」仕事といえるので、非常にやりがいを感じます。
環境調査の主な流れ
ここからは、環境調査の主なスケジュールを紹介します。
生物調査と土木・構造物調査で調査内容や扱うデータは異なりますが、工程は共通しています。
日程を決めて各日の調査内容をまとめる
必要な機材をリストアップして準備する
社員や協力会社から人員を確保して、調査日数に合わせて宿を予約する
現地に向かい調査、1日の終わりにその日に取ったデータと写真を整理する
すべての調査データをまとめる
調査データをもとに評価や考察を加え報告書を作成する
報告書や調査データを受注先に納品する
これらに加え、時間があるときは営業に周ったり、調査機材を整備・定期点検したりもします。
繁忙期は対象生物・施設によって異なりますが、生物調査では生き物が活動する春~秋、土木・構造物調査では秋~冬に忙しくなる場合が多いです。
環境調査では分野・季節によって仕事量が偏りやすいので1年を通して仕事を受注するために、生物調査と土木・構造物調査の両方を行う会社も珍しくありません。
まとめ:環境調査は生物の保全や人々の安全につながる仕事
環境調査は外仕事なので、
- 夏は35℃以上、冬は10℃以下の環境
- がけ崩れや落石、危険生物との遭遇
- 暗所や高所作業
など危険な現場もあります。ただ山や河川、海などフィールドに出る仕事がしたいに人とは相性が良いです。
それだけではなく「生物調査は生き物や生息環境を守り、土木・構造物調査では人々の生活や安全につながる」ので、大きなやりがいを感じられる仕事です。
環境調査の仕事については他の記事でも紹介しているので、ぜひご覧ください。
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